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金剛堂日記


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ここまでで、とりあえず一区切りです!

で、最終的にスクとツナがくっつく、と。
子どもまでつくるらしいですよ。
……私にそこまで書く勇気はありませんでした…。
そ、その辺りは皆様の想像力におまかせしたいと思います。

はー……良い気晴らしでした!
ここまでお付き合いくださいましてありがとうございました!
では、よろしければ「つづき」をどうぞ!






それは目も眩むような月明かりの中。

意識も暗むような黒血の網の中。

滴る剣先の返り血も弾けぬままに立ち尽くしながら。

俺は。


己の身体に死が染み付いていくのを、呆然と噛み締めていた。





再生の魔精アグレスによる世界の大粛清。

アングアロスの奇跡。

死生学者メレスト・カレイドンの年代計算法。

秩序の書。

そして、聖ベリアス樹海。

アグレスとアルセナ正規軍、アルセナ民衆軍、シーリンド正規軍の混成集団による戦闘。

人間による世界の平定のために必要とされた聖戦。

多大すぎる犠牲に目を瞑らぬものはなく。


当時アルセナ正規軍に所属していた俺は小隊長として後に【ノスティディルの戦い】と呼ばれるその戦に身を投じていた。

生を奪うことに快楽を得、いつ命を潰えさせるのかわからないスリルに身を、骨を、焦がし続けていた。

敵味方判別の付かぬ数多の屍を踏み越えて、最強最悪の敵と対峙した俺に降りかかったのは甘美なる勝利と悪劣すぎる代償。

猛毒よりも悪質なアグレスの血。

骨身に染み入る死の影は急速に全身を回り、人の身では到底抗いきれないものだった。

今にもくずおれそうな身を棒切れのように地面へと突き立てながら、俺は月を振り仰いだ。

終わるのか。

終わるというのか。

この俺の生が。

こんなところで。

全身に裂傷はある。

が、致命的なものなどではない。

自分が死ぬのは、多大な、到底叶わぬ敵が現れてからだと信じていた。

コレは。



コレは、違うだろう。



俺は勝利したではないか。

かの魔精は、血を流して消えうせたではないか。

俺は負けてなどいない。

だというのに。

失われるというのか、俺の、命は。













「うおあああああああああああああああ!!」









遠吠えのように。

月夜に吼える銀狼のように。

しかしその慟哭を聞く者は他にあらず。

血に塗れた剣士は一人生に縋り付こうと足掻いてみせた。













「戦場の鬼神。惨劇のディアボロス。神殺しのスクアーロ」


ざっと。なぎ払うように。

月光に切り取られ、スポットを浴びせられたようなスクアーロの元に、ソレは降り立った。

場の不浄の全てを払拭し、神聖な儀式を思わせる眼をしながら。

「生きなさい」

金色の翼を瞬時に光の珠へと転化させたその者は、髪を掬い上げ、背を向けて、スクアーロに己の首筋を示す。


「永遠を生きなさい」


ほのかに輝く白い肌。

甘やかに誘う微かな芳香。

まるでそれが義務付けられているかのように。

スクアーロは手を伸ばした。

腰を引き寄せ、肩を抱き、鼻先を髪に埋めながら。

プツリ、と。

「っ……スペルビ・スクアーロ…」

肌を貫いた歯に真紅が滴る。

漏らさず、啜り上げ、一滴一滴を体内に流し込んでいく。

血管を、肉を、骨を、その温かな血液は全身を巡っていった。

内に宿る熱に体内が浄化されていく。

そうして、意識は暗転した。



















「貴様、は……」

「思い出しましたか?」

「……俺は、あの頃の記憶が、曖昧だ…」

両頬を包む手が段々と熱を帯びてくる。

あの日受けた血の香りのように。

「精霊の血を飲む者、永遠の若さと命を得る……そういうことです」

「っ…!じゃあ、やっぱり貴様が…!!」

「貴方を不老不死にしました。貴方も、それを望んでいたのではないのですか?」

「俺、は…!」

不老に、不死に、なりたかったわけではなかった。

ただ、生にしがみつこうとした。

そこに甘すぎる誘惑が降りかかったのだ。

手を伸ばさずにはいられない、本能を揺り動かす存在が。

それを………そうだ。俺は、責める権利など、持っていない。

「俺はツナ。運命を――予言を司る神、精霊です」

無感動な瞳が。

人形のような、感情を宿さぬ黄金の瞳がキラリと瞬いてスクアーロを見据える。

「貴方は破滅の予言を回避するべく、選ばれたのです」

世界の滅びを、死を予言する書は神の手の中に。

「貴方の300年は、このために在った」

300余年、スクアーロは孤独と寄り添って生き続けなければならなかった。

どんなに狂おうとしても、自殺を図ろうとしても、理性が己を繋ぎとめ、治癒能力が現世へと縛りつけた。

老いることもなく、死ぬこともなく。

多くの仲間に出会っても、必ず別れがやってくる。

生きて、死んでいく者を幾人も見送ってきた。

その度に苛まれる絶望と孤独に背を押されても、心の奥底に潜む寂しさ故に人間たちの傍から離れることが出来なかった。

どんなに人のせいにしてみても、曲げられない真実はこの胸の内にある。

永遠の孤独を。

永遠の生を。

たった一人で耐えていかなければならないものだと、ずっと――。


けれど。


「戦いなさい」


するりと、白い腕が離れていく。


「100年戦い続けなさい」


見下ろす瞳はゆっくりと瞬き。


「貴方の部隊を率いて…」


そのために貴方は生かされた。


破滅の予言の回避という大きな目標があれば、自分も少しは、人の子の時間の中に入れるだろうか?

世界救済という、人のための目標があるのなら。

生きるための、目的があるのなら。




熱い滴がひとつ、零れた。




「貴方が予言を覆せば、そのたびに書は書き換わります。俺は導くために貴方を見守り続けましょう」

すっと掌を持ち上げられる。

気付けば華奢な指に左手が覆われていた。

「いきなさい、スペルビ・スクアーロ。破滅の予言を回避するために」

毎年繰り返される邪悪な闇の侵攻を、予言を打ち砕くために。

ふと上げた視線の先で、神はゆっくりと眼を閉じた。

そのまま、光に覆われていく。

「……ああ。やってやろうじゃないか……他に、道がないのなら」

失われゆく世界の中で、予言回避の意志を貫けるのは不死の己しかいないのであれば。

決意にも、失意にも似た瞳で、スクアーロは眼光を引き絞る。




光の中で、神が微笑んだような気がした。








V&B ~神と魔術と滅びの予言~



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