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金剛堂日記


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間があいてしまい、誠に申し訳ございません!!!!
そして、よりによって長々しいです!!ごめんなさい!!!
頑張って切っては繋ぎ、切っては繋ぎを繰り返したのですが……勢いに任せた文章は、地ならしも難しい模様です…。
うっすらとゴールが見えてまいりましたので、気合入れてやっていきたいと思います。

……勢いな妄想なので、さらりと流し読みしてくださると幸いです。

ではでは、お付き合いくださる方はつづきへお進みくださいませ~
 




ひとつ、またひとつ。
階段を下る足音が反響し、幾重にも折り重なって拡散する。
そのリズムは一定ではなく、時に淀み、時に加速しては塔内を駆け巡った。
「くそ…」
カツカツと細かく刻まれていた足音が唐突に止んだかと思うと、身体が壁を叩く鈍い音色が辺りを打つ。
点々と等間隔に据えられたランプの橙の光が、彼の影を緩く伸ばしながら揺れる様は、まるでその存在が霞んでいることを示すようで。
「くそ、がぁ…!」
赤レンガの積み重なる壁に右の拳を打ちつけ、左の拳を己の胸に叩きつけながらスクアーロは歯を食いしばった。
一歩一歩、階下へと近付くたびに湧き上がる脂汗が服の下を滑り落ちていく。
油断すれば震えだしそうになる指先が憎くて、拳を解けないでいる自身に吐き気を催すように。
今にも閉じてしまいそうな瞳をこじ開けて、スクアーロは進むべき先へと目を凝らす。
バラバラと肩から前へと流れ落ちてきた髪を払いながら、また一歩。
「まだ、膝を折るには…早すぎんだろぉ…」
拳で壁を叩き、何かに耐えるように息を切らしながら、地下へと歩みを差し向けた。








「う、わぁ…うわぁ…!暗い怖い暗い怖い!キョーコちゃん!ハル!ちゃんといる、よね!?」
「なーん」
「みゃーお」
しっとりと湿気を帯びる壁に手をつきながら、俺はゆっくりゆっくりと足を進めていた。
一寸先は闇。
何かの本で見かけた言葉が脳裏をよぎる。
一寸がどのくらいの距離なのかは知ったこっちゃないけど、一寸どころか1ミリ先も見えない気がするのは……気のせいだ。
そうだ。気のせいだ。
なんとなーく、薄ぼんやりと見えるようになってきた…ような気がし始めたから。
……そう思いこまないと足が竦んでしまう。
せめて、せめて懐中電灯とか、ランプとか、取ってきてもらうんだった。
光源がないまま前に進むというのはある意味自殺行為じゃないだろうか。
人外だというスクアーロならまだしも、俺は普通の、ありふれた平凡な人間でしかない。
感覚は世間の常識と多少ズレているかもしれなくても、人間なのだ。
先が見えないと怖いし、危なくて歩き出すなんてことできない。
……行かなきゃ助けてもらえないようだから、行くっきゃないわけだけれど。
念じるように己を何度も奮い立たせ、キョーコちゃんとハルの存在に助けられてやっと立っていられるのだ。
努力と根性のおかげでじわじわと進めている、し。
壁についた手を先導するように前へと沿わせ、それを追うように足を浮かせる。
ふうふうとすぼめた唇から息を吹き出して、派手に脈打つ心臓を宥めながら瞬きをひとつ。
俺が足を止める度に鳴き声を発して促してくれる二匹は、常に三歩ほど前を進んでいるようだ。
さすが猫、といったところなのだろうか。
夜目がきくのか、気配に敏感なのか……とにかく、助かる。
「もう結構進んだ、と思うのは勘違いなのかなやっぱり」
時間の感覚が狂わされているのだろうという自覚はあるけれど、それがどれくらいかはわからない。
だってもう一時間はゆうに歩いているような気分なのだから。
そんなわけないってわかってるけど。
一時間も時間をかけていたら、いくらなんでもスクアーロがなんらかのアクションを起こしてくるだろうから。
「ああ……もう、俺ダメかもー……」

「なーん!」

がっくりと肩を下げ、項垂れた瞬間を狙ったかのように、ハルが一鳴き。
強く、高く。
注意をひきつけるように鳴いてみせるものだから、俺は反射的に顔を上げていた。
ふわ、と揺れた前髪の間から覗いたのは――。
「灯り?」
ポ、と。
まるでスイッチが入ったかのように灯るオレンジの灯。
十メートルほど先から順に。
一秒ごとの間隔を開けて、ひとつ、またひとつ。
俺の立つ方へと灯っていく。
壁と天井の境目に程近き位置に備え付けられた……あれは、蝋燭だ。
……どうやって。
灯る光は炎。
自然と点いていくのはおかしい。
一体どうやって。
「………あ、スクアーロ、かな?」
――そうだ。
そうに違いない。
というか、そうとしか考えられない。
使用人さんは俺の見ないところにいるようだけれど会ったことないし、俺の中で人外といえばスクアーロだから。
こういうマジック的なことも可能なんだろうか。
可能、なんだろう。
何せ神出鬼没だし。
いつもこの言葉で片付けてしまっているけれど……まあ、そうやって自分を納得させることも必要なわけだ。
でないと、足が竦んで固まってしまうだろうから。
ぽつぽつと俺を先導するように揺れる火は真っ直ぐに続く通路をぼんやりと浮かび上がらせる。
これで進みやすくなった。
……不気味さは増したけど。
「走っちゃおうか?」
「みゃーお」
恐怖で心が満たされる前に。
白と黒のコントラストに目配せをし、カッと石畳を蹴った。
遠く見える扉は所々黒ずんだ大きな両開きの木戸。
あそこを抜ければ、スクアーロが言っていた場所のはず。
落ち合うというのなら、スクアーロもそこに来るのだから。
早く。
早く。
お化けとか幽霊とかの発想に行き着いてしまう、その前に。


「はっ…はぁ…」
たった十メートルを疾走したくらいで息が切れるなんて…体力ないなぁ俺。
ともすればガクガクと震えだしてしまいそうになる膝を両手で押さえつけながら、俺はやっと目の前に現れた扉を見上げた。
外見からして重みと厚みを感じさせる木目の大きさ。
大木から丸々切り出したように思えるのは、浮き上がる年輪の大きさのせいだろうか。
黒の鋼で杭を打たれ、縁取られた楕円の天辺はどこからともなく潜り込んだ風に灯が揺れるため、やや不気味に揺らめいている。
長く伸び、扉に覆いかぶさる己の影でさえ、襲い掛かってくるような妄想に取り付かれてしまいそう。
「あー…ないない。そんなのないって」
ぶんぶんと首を大げさに振って、くだらない靄を消し去った。
ネガティブな思考に追い立てられてしまうくらいなら、さっさと明るい場所へ向かうべきなのだ。
惑う指先を叱咤して、立ちはだかる扉に掌を這わせた。
しっとりと肌に吸い付くような湿気を帯びる木の冷たさに、ぞくりと肌が粟立つ。


「…っ」


己の非力を自覚していたから、思い切り押さねば、と心積もりをしていたのに。
まるで手招くように。
両手を広げて迎えるように。
舞い上がる羽毛を追いかけるが如く。
俺が押すまでもなく、扉は進むべき先へと。
吸い込まれるように開いていったのだった。



「え?」
まるでページが破り取られた瞬間。
剥ぎ取る動作に似た切り替わり。
眼前に現れた空間に満ちていたのは、闇。
後ろから背を押すオレンジの灯りのおかげで自身は見えているものの、前はまったく見えなかった。
インク壷をひっくりかえして、固まってしまった机上を思い浮かばせるような、模範的な黒。
脳がフラッシュバックするような感覚の中で、俺は吸いこんだ息を反射的に止めていた。
無。
いや、無ではない。
ここには、闇がある。
何より濃い、漆黒よりもなお黒い闇が。
「………どうして」
何故。
どくどくとやけに大きく感じる鼓動の源。
胸元へと右手をやれば、自然と服を握り締めていた。
何故だろう。


恐怖を、感じない。


ただ……ただ、とてつもなく。
そう、とてつもなく……嫌悪を。
なによりおぞましいものを、感じるのだ。
恐れからではなく、嫌悪から、身体が進むことを拒絶する。
……記憶にはない。
このような闇に嫌悪を感じる理由など。
けれど、確実に。
俺は。

俺は、この闇が―――。




『間抜けな羽虫が迷いこんできやがった、か?』




脳を。
臓腑を。
身体の内側から叩くような声音が響く。
部屋中にではない。
俺自身の中に、だ。
心臓から臓物から、手足、指先、その神経の全てに渡って、低い低い、獣の唸りを思わせる声音が行渡っていく。
おぞましい怖気を伴って。

「はっ……!」
思わず発された声は常にあらず、息を吸うと同時に溢れ出てしまった声だった。

己の目を、疑う。

塗りつぶされた黒の中に、輝く赤が二つ。
目の前で、火花を散らすように現れたのだ。
ルビーよりなお深く、炎よりなお強く。
ギラギラと滾っているようにも、無感動に浮いているだけにも思える赤。
純粋なように見えて、不純。
ドロドロと溶けていきそうなのに固定された球体。
それが、手を伸ばせば触れられるほどの位置で、俺を捉えて動かない。


『……相変わらず乳臭えガキだな…』

「っ…あ……」


それが双眸なのだと気付いたのは、暗闇の中から伸びてきたゴツゴツと硬い何かに首を圧迫されてからだった。
パチリと闇が素早く瞬いたことにより、射抜く視線が現れたのだ。
苦しさに喘ぎながら咄嗟に引き付けた手で俺の気管を圧迫するソレを掴んだことにより、目の前の双眸が人の形をしている者の所有物なのだと思い知らされる。
まるで、闇が凝り固まって形作られたような――雪像を連想させる、ソレ。

『ここで圧し折ってやれば連鎖が断ち切られるんだろうが……それでは面白くねえな…』

クツクツと不気味に笑う声音の主はその言葉と裏腹に、俺の首をギリギリと締め付け、握りつぶそうと力を込めている。
鼻頭がじわりと痛みに滲む。
額から生まれた痺れは徐々に目頭から頬へと侵食し始めて…。
苦しい。
ままならない呼吸の先に、死がちらつく。

なのに。




ああ、気持ち悪い。




なのに、なお。
恐怖より先行する嫌悪。
気持ち悪い。
触れられたくない。
この、闇は――。
存在が――。
なにより――。
ああ――。

途切れ途切れ、散り散りになる思考に纏まりなど求められない。
断片的な本能に塗れて、霧散する言葉が誰のものなのか――自分のどこから溢れているのかすらわからない。
叙情。
詩的。
把握しきれない記憶の水底。
伸ばした手も。
抗う爪も。
救いを掴み取ることなど出来ずに。




「スク、ア、ロ…」





零れ落ちた名に自覚すら持てぬまま、ツナの意識は闇へと墜ちていった。

 

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