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金剛堂日記


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長くて切った結果……現状3つになりましたが……4つにするべきか悩み中です。
ともあれ!7つ目です!ありがとうございます!
初めてご覧いただく方は、よろしければ1つ目の注意書きに目を通していただければと思います。
よろしくお願いいたします…!

ではでは、お付き合いくださる方はどうぞつづきへお進みくださいませ~v




「あが!」
「う゛お゛ぉい!死んだかぁ!?」
「よりに、よって…そんな訊き方する…?」
落下すること約5メートル。
結構な高さだったおかげか、俺の下敷きになっている瓦礫は所々砕けて元の規則正しい四角が見る影もなかった。
うう……背骨も足の筋も体内で共鳴するように痛むし、膝も肘も掌も赤く擦りむけてヒリヒリする。
ともあれ、命があるのは奇跡かはたまた必然か。
右足首がツキンと痛むものの、折れてしまった様子は……おそらくない。
骨なんて折れたことない。ゆえに!折れたかどうかなんてわかりっこない!
本やマンガで読んだことがある程度の知識しかないから、あてになりやしないけど、左足は生きてるから立てないこともないし。
まあ、いっか。

「スクアーロ!俺、どうしたらいいわけー!?」
身体のチェックを一通り終え、唯一の光源である頭上へと視線を上げた。
ぽっかりと穴の開いた天。
石と石が重ねられ、舗装されたトンネルのような丸みを帯びる天井。
瓦礫が積み重なる床はこれまた石畳、だったが、地上のものと比べるとやや乱雑な感を得る。
石の大きさはバラバラで、統一性が見えない。
作り手がせっかちだったのか、はたまたわざとそうしたのか……意図は掴み辛いが整えられた感が薄いのは確かだった。
どこからともなく吹き抜ける風は冷たく、日の光が届かない先は真っ暗で何も見えない。
左右へ伸びる通路の先は、己さえ見失いそうになるほどの暗闇。
ここは……どこなのだろう。
「そこは……地下通路だな。また厄介な所に落ちやがって」
顎を開いて見上げた先には、髪をダラリと垂らしながらこちらを見下ろすスクアーロの顔が覗いている。
ぐっと歯を噛み締めるような仕草に、常にない焦りを垣間見た気がしたけれど……そんなわけ、ないよね。
付き合いはまだまだ浅いけど、俺が知る限りのスクアーロは怪人だからという無理矢理な理由でなんでもしてしまう変人だもん。
さっきだって、屋根の上から飛び降りたんだし。
「とりあえずスクアーロも来てよ。なんかここ、寒気がすごい」
先ほどから奇妙なほどに背筋が震えて仕方がない。
手足は暖かいままだし、身体が冷えた感触もないのに……臓腑から巻き起こっているかのように身体が震える。
肌は粟立ち、曖昧に口を閉じれば歯がカチカチと鳴ってしまいそう。
なんだろう。
何かを、感じる。
「……無理だ」
「へ?」
「そこには飛び降りられない」
何言ってんの!というツッコミすら忘れて、俺はスクアーロを凝視した。
何を言うか。今更。
屋根からだって飛び降りるし、神出鬼没だし、怪人だし。
なんでもするじゃん。なんでもできるじゃん。
なのに……ここには飛び降りてこられないって……。
「どういうこと!?」
「っ――とりあえず、左に進め。壁に手をついて行けば歩ける。しばらく行ったらでかい扉に突き当たるはずだから…そこで落ち合おう」
何かを言いかけてやめたスクアーロは、一度唇を引き結んでから俺へと指示を飛ばした。
ふ、と細まる瞳の光はどこか鋭く、遠めからでも真剣さを孕んでいることが見て取れた。
……いや、いやいやいや。
そんなことって!
一人で、この真っ暗な中を突き進めってこと!?
「なにそれ!本当!?本気!?」
「ロープ持ってきてもいいが、お前、登れる自信あるのかぁ?」
「…………ないです」
そりゃないですとも。
生まれてこの方、運動神経が研ぎ澄まされたことなんてないもん。
もっと言うと、『まるでダメ』。
体力に対する自信は皆無と言い切れる。
「急いで行ってやるから……お前はゆっくり歩きゃいい」
迎えに来てくれる気があるだけマシ、と考えるしかないだろうか。
いやでも、おかしいじゃないか。
屋根からはオッケーでここはダメって…なんでだよ。
「言いたいことは大体わかるが、説明は後だ。…わざとらしくふくれてんじゃねえ!」
わざと頬をふくらしたことでスクアーロが身を乗り出して語気を荒げた。
わざとって、なんでわかるかって?
そりゃ両頬だもん。全力で膨らせてるもん。当然といえば当然。
こっちだって、意図的なんだってわからせるためにやってるもん。
……でも、本気で怒っているわけじゃないってのは、わかる。
多分、俺の不安を和らげるためにスクアーロもわざと大きな声を出したのだ。
「ついでにこいつらも連れてけ!」
「ほぎゃ!」
ぽい、と投げつけられたソレは、真っ直ぐ俺の顔面へと落ちてきた。
ああこの感触。
なつかしいというにはあまりにも最近過ぎる、デジャヴ。
「ハル!ちょっ!爪立てないで!」
頭にしがみ付くハルを両手で抱えて剥がし、そっと地面に降ろす。
あーもう…毎度毎度、なんだってこんなに必死に抱きついてくるんだか。
「みゃーお」
「…ん?あれ?なんで」
「俺たちが飛んだ後に、そいつも追って落ちて来てただろうが」
「そ、そうだっけ?」
自分の落下に気を取られて気付いていなかった、のか。
ハルを降ろした手に擦り寄ってきた毛並みはしとやかな白猫のものだった。
八の字を描くように、腕へと身体を摺り寄せてくる。
「そいつらがいりゃあいくらかマシだろぉ!おら!俺も急ぐからさっさと歩けぇ!」
「はーい」
さっと立ち上がり、背を向けたスクアーロは顔だけ振り返りながら俺が動き出すのを待っている。
まあ確かに、二匹が一緒にいてくれるのといないのとでは心境の差は歴然だ。
猫とはいえ、その存在に助けられる。
「絶対来てよねー!」
「わかったから……手を振るなぁ!」
怖いんじゃねえのかよ!
叫びながらもスクアーロは館の方へと姿を消した。
怖いさ。ああ怖いさ。
けど……二匹が一緒にいてくれるし、スクアーロも、ちゃんと来てくれるってわかったから。
眉間の皺が深かったのも、きっと心配してくれてる証でしょ?と勝手に思い込んでおこう。
「うん。行こう。来てくれるし。絶対来てくれるし」
うんうん。うんうんうん。
自分に言い聞かせるように何度も頷きながら、俺は勢いを付けて立ち上が――。
「ぎゃっ!」
ろうと、した瞬間。
一歩踏み出した足は積みあがった瓦礫をしっかりと踏みつけたけれど、力の加わり過ぎた瓦礫はゴロリとずれて、転がって。
「うええ…」
「みゃーお」
「なーん」
思いっきり顔からこけた俺を、白と黒のコントラストが両側から覗き込んできた。
「……なんか、もう、やだ…」
嫌な予感と先行きの不安ばかりを抱えながら、滲む涙を必死に堪えるしかないのだった。

 

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