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金剛堂日記


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嫌な癖がついてしまっている。

午前中は、まず一日のスケジュールの把握と、昨日のうちに処理しきれなかった書類に判を押しきってしまう作業から始まる。
目を通す作業が完了しているものばかりだから、これは速い。
大方、獄寺君らが選別し、審査してくれている書類ばかりだから数は少ないはず、なのだけれど、それでもやっぱり中々手ごわい量なのだ…。
次の日に残す、というのはものすごく気が退ける。
でもどうしても残ってしまうものは残ってしまうのだ。
人と会う約束などもあるから、書類関係は遅らせられるのなら遅らせてしまう状態にある。
…気が退けてしかたがない。
そんなわけで、昨日の分はできるだけ早く終えてしまい、今日の分にとりかからなければならない。
左から一枚とり、サインをして、判を押して、右に寄せる。
それだけの工程。されど、それだけの工程。
単純作業ほど根気のいる作業はなく、地味に多くのカロリーを消費していく苦行なのだから。
午前中は大概、書類をさばくだけで潰れてしまう。
いいんだ。
それが仕事なんだから。
昼からは違った動きもあるし、単純作業が嫌いかといえばそうでもない。
でも……俺はこの書類たちとの格闘の日々に、大いに悩まされている。
何に困っているかって……それは…。
「失礼します、十代目!そろそろ――」
「あ、獄寺君!ちょっとまっ…」

ぐうぎゅるるるるるるるるるるぅぅぅ……

嫌な癖が、ついてしまっている。
……思うに、俺は相当、カロリー消費がスムーズなのだ。
盛大に鳴り響く腹。
扉を開け放ち、追加なのだろう、書類を片手に一歩踏み込んでいた右腕がピタリと固まったまま、動かない。
……穴があったら、埋まりたい。
というより、今すぐ掘って入りたい。
「う……ううぅぅぅ……」
両手で顔を覆いつくしているから、呻きはくぐもって室内に波を落とす。
指の隙間から覗き見た時計の針は丁度てっぺんで重なっていた。
ああ…まさしくお昼だ。
いい○も青年隊が歌い、踊り出す時間だ。
何故だか正午丁度に腹が鳴る癖がついてしまったため、お昼休憩だけは時計がなくとも正確に取れるようになった。
が、全然自慢になりゃしない。
「丁度お昼っすね!俺、何かつまめるもの持ってきます!」
「うん……ごめん、ありがとう獄寺君……」
しばらくぽかんとしていた獄寺君が、気にしていない、という様子で微笑みながら踵を返した。
うう……ホントに、ありがとう…。
昼ごはんは、食堂でとることになっているのだが、俺の場合は大概邪魔が入る。
急ぎの仕事の内容を伝えられたり、お偉方が話しかけてきてくださったりと、おちおち休んでもいられないのだ。
おかげで食事もろくに進められず、午後の仕事を始めた時にも腹に住まう虫が鳴きやまないことなど多々あった。
だから、食事に赴く前に、軽く何かを入れておく。
『腹が減っては鉄も斬れぬって言うだろぉ!とにかく何か食え!』
なら、お前は腹がいっぱいだったら鉄でも斬るのか、とツッコミたかったけれど抑えた俺はなかなか頑張った方だと思う。
俺の嘆かわしいお昼御飯事情を耳に入れた恋人が、眉間に皺を寄せながらわざわざ叱りに出向いてくれたのだ。
日本語の間違いは今更なので、脇に置いておくとして。
…言ってることはわからないでもなかったし、何より心配してくれてるんだなーって感じられて、嬉しかったから、ね。
……心配、してくれてるんだよね?
まあ、俺の勝手な思い込みでも一向に構わないんだけど。

獄寺君が調達してきたサンドイッチを口に放りこみながら、考えるのはスクアーロのことばかり。
あんなこと言ったんだから、スクアーロこそちゃんと食べてなきゃ……腹立つし。
無茶してなきゃいいけど。
今度満腹のときにでも鉄を斬ってみせてもらおう。
言ったことは証明してもらわにゃ。
うん。
そのためには、一緒に食事、しなくちゃね!
満腹にしなきゃいけないんだから。満腹に、させてやるんだから!

次、帰ってきたら、俺から食事に誘おう、なんていう決意を思い描きながら、俺はまたひとつパンの塊を口に突っ込んだ。

 

「ちょっとせんぱーい!王子に仕事させといて、何休んでんだよムカツクー!」
「んむ………何言ってんだぁ!お前が勝手に飛び降りてったんだろぉ!さっさと殺し始めたのはどこのどいつだぁ!」
くわえていた管から口を離し、今しがた殺しを終えて戻ってきた同僚に向かって吠える。
ターゲットを確認するために林立する家々の屋根を飛びまわっていたのだが、標的の位置、状態を確認するやいなや飛び掛っていったのは自称王子の方だ。
もともと一人でもなんとかなるような相手だった上に、奇襲をかけたのだから一人で大丈夫だろうと思って放っておいたのだ。
なにより、勝手に行ったのだ。
それで死のうが傷を負おうが知ったことではない。
屋根の縁に腰掛け、高みの見物を決め込んでなにが悪いというのか。
「つうか、それ……なに飲んでんの?」
「十秒メシ。飲んでんじゃなくて食ってる」
再び口に管を含んで吸い込めば、ゼリー状の物体が口内を満たしていく。
「それが飯!?ありえねー!そんなん食うくらいだったらディナーまで我慢してフルコース食った方が全然マシだっつの!」
「うるっせえ!終わったんならさっさと行くぞぉ!」
ガチ、と管を噛み、口に加えた状態で立ち上がって、腕に取り付けた剣を払う。
髪が風に弄ばれるから押さえつけながら。
これは両手が空くし、何より摂取時間が早くていい。
十秒もいらねえ。五秒でいい。
……何より、綱吉に昼くらい食えと言ってしまった手前、食わないわけにもいかなくなったのだ。
見えないし、知らせることもないから律儀に食わなくてもいい、という考えも脳裏をよぎりはしたのだが…。
あいつの、自分に便利な超直感が働かれても困るので、こうして毎食きちんと取る習慣が付き始めていた。
良いことなのか、悪いことなのかは……微妙だが。
「あ、そういやここから別行動って言ってたっけ。うっわー!なおさらムカツクー!どうせあそこ行くんだろスクアーロ!ムカツクー!」
王子まだもう一人殺んなきゃいけないのに!と悪態をつき続けるベルを置いて、俺はさっさと飛び上がった。
屋根伝いに、ひた走る。
戻ったら飯にでも行くか。あいつと。
などと、ぼんやり思考を巡らせながら。
アジアの風は、すこし湿り気を帯びていた。


02.12時に盛大に鳴るおなか

配布元
冷凍いちご 様
http://sky.geocities.jp/siromoti05/

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